芸術の秋に開く新しい扉、初心者でも楽しめるアートの鑑賞方法

「芸術の秋」と言われるように、周囲の山々など周囲の自然が美しい色彩をまとうこの季節は、私たちの感性を強く刺激する季節でもあります。

“アート”は心を豊かにするだけでなく、生活のふとした瞬間に輝きを放ち、新しい視点をもたらしてくれる稀有な存在です。

しかし、アートと聞くと、どこか難しく縁遠いと感じてしまう方がいるのも確かです。
今回はアートに詳しくない方でも、気軽かつ今までにない視点で楽しめる鑑賞方法をご紹介します。



 

とにかく見るとにかく想像する、アート鑑賞の基本


アート鑑賞の基本は、「見る」ことにあります。

ぜひお近くの美術館やギャラリーで開かれている展覧会に足を運んでみてください。
作品の前に立ったら、まずはじっくりと見つめてみましょう。

色、形、構図、質感など、視覚的な要素に注目することで、作品が持つ独自の世界に入り込むことができます。
全体はもちろんのこと、細部に注目することで、作品の中に隠されたメッセージや作家の意図が浮かび上がることもあるでしょう。

例えば、色使いが大胆な抽象画を見るとき、色そのものが持つ感情や意味を考えたり、形の配置が意図するところに想像を巡らせたりできます。
全体の構図の中でどこに目が引き寄せられるのか、どのようなリズムや動きが感じられるかなど、目に映る情報をじっくりと観察してみてください。

その感想は何も難しい言葉で表現する必要はありません。
感じたままをそのまま受け入れてみましょう。

作品をじっくりと観察する時間を楽しむことで、アート鑑賞の第一歩を踏み出すことができるでしょう。


 

アートの裏側にある秘められた情報を探る


アートを楽しむために特別な知識は必須ではありませんが、作品や作家のプロフィールや時代背景を知っておくことは、アートの鑑賞をさらに奥深いものにしてくれます。

その作品が発表された前後の美術史やそこに至るまでの社会のトレンド、作品の制作背景を知ることで、なぜその作品が生まれたのか、作家が何を伝えたかったのかが見えてきます。

例えば、印象派の絵画が誕生した背景には、19世紀フランスの社会変革や技術革新があります。
フランスでは都市が発展し、人々の生活が忙しくなり、新しい景色や生活の様子を描きたいと思う画家が増えました。
また、写真が普及したことで「リアルに描くこと」の役割が変わり、画家たちは「自分が感じた印象」をそのまま表現することに興味を持ち始めました。

さらに、絵の具がチューブに入って売られるようになり、画家たちは外に持ち出して、自然の中で描けるようになりました。
これらの変化が、印象派という新しい絵画のスタイルを生み出すきっかけとなりました。

「光の画家」とも呼称される日本でも有名なクロード・モネの作品群も、こうした時代背景や技術革新なくして生まれなかったことでしょう。
こうした知識を持つことで、作品をさまざまな角度から見ることができ、新たな発見が得られます。

また、知識を増やすことは、アートの楽しみ方を広げることにもつながります。
同じテーマを扱った異なる時代の作品を比較したり、特定の作家の作品を時系列で追ってみたりすることで、その作家の進化や変遷を感じ取ることができます。
知識を深めることで、作品を見る視点が増え、より豊かな鑑賞が可能になります。


 


友と語らい自らも表現するアートの世界


アート鑑賞は、一人で楽しむものでもありますが、他者と共有することで新たな発見が得られることも多いです。
グループで美術館を訪れたり、アート作品について語り合ったりすることで、他者の視点を通じて新しい見方や解釈が生まれます。

同じ作者、同じテーマ、同じ作品でも、意見がいくつにも分かれることに驚かされるとともに、「アートに絶対の正解はない」ということにも気付かされるはずです。

また、アートをより深く理解し楽しむために、自分で実際にアートを表現してみることもおすすめです。
絵を描いたり、写真を撮ったり、簡単な彫刻を作ったり、方法は何でもかまいませんし、上手にできなくたってかまいません。

とにかく楽しむことが大切です。 自分で表現する過程で、色選びや構図の決定、素材の選定など、アーティストが直面する様々な選択肢に気づくことができるはずです。

こうしたプロセスを通じて、アーティストの視点に立って作品を作り出す楽しさと難しさの両方を体験できます。
鑑賞時に作品に対する理解が深まるだけでなく、アーティストの意図や技法への尊敬の念がさらに増すかもしれません。

 



無限大のアートの世界へようこそ


アートは、見る人によって無限の楽しみ方があります。
特別な知識がなくても、自分の感じたままに楽しむことができ、少しの知識や他者との対話、自らの表現を取り入れることで、さらにその世界を広げることができます。

「芸術の秋」に、アートの扉を開き、日常生活に彩りを加える方法を見つけてみてください。
新たな発見と喜びが、あなたを待っていることでしょう。


文/中新 大地(コピーライター)
1994年岡山県岡山市生まれ。
大学在学中の2014年より企業・個人の広報やブランドに携わる。
ネーミングやキャッチコピー制作、ホームページのコピーライティング、SNS運用等を担当。
”新卒フリーランス”という特異な経歴から、中学生から社会人まで幅広い層へのキャリア関連の講演も。
人々の「選ぶ」の裏にある「選ばない」選択肢を増やすためにも、多様な生き方と働き方を発信している。
趣味は博物館・美術館巡りと車中泊旅。