【保存版】
未来を創る、小さな一歩の積み重ね
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の最新治療薬とセルフケア — メコバラミン承認・トフェルセン登場と日常に役立つ未病対策
~くすりを知るシリーズ⑯~
薬剤師 NK
はじめに
私たちの体の中には、脳から筋肉へ信号を届ける“神経の糸”があります。ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、その糸が少しずつほどけてしまい、動きが徐々に失われていく病気です。運動に関わる糸が選択的に障害され、筋力低下・嚥下障害・呼吸不全へと進行する疾患です。完治はまだ難しいですが、近年、進行を緩やかにする薬が相次いで登場し、未来へのちいさな希望を灯しています。

最新承認薬とその意味
ALSは運動ニューロンが選択的に障害され、筋力低下・嚥下障害・呼吸不全へと進行する疾患(神経難病)です。治療の選択肢は限られますが、近年は「遺伝子を標的にする治療」や「バイオマーカーを用いた承認」が登場し、治療の風景が変わりつつあります。
リルゾール/エダラボン
昔からあるALS治療薬で、神経の過剰な興奮を抑えるリルゾール、活性酸素を減らすエダラボン。どちらも病気の進行をわずかに遅らせるものです。
・リルゾール(リルテック錠):グルタミン酸遊離抑制などを介して病勢の進行をわずかに遅らせる古典的薬剤(1995年FDA承認)。ナトリウムチャネルの調節を介して神経興奮の抑制→興奮毒性軽減を目指します。
・エダラボン(ラジカット注):グルタミン酸遊離抑制などを介して病勢の進行をわずかに遅らせる古典的薬剤(1995年FDA承認)。ナトリウムチャネルの調節を介して神経興奮の抑制→興奮毒性軽減を目指します。
2024年承認!
高用量メコバラミン(ビタミンB₁₂)
・メコバラミン(ロゼバラミン筋注用)ー2024年 日本承認
ビタミンB₁₂の一種であるメコバラミンを高用量(50mg)で筋注する「JETALS試験」で、16週間後のALSFRS-Rスコア低下がプラセボに比べ約43%少なかったと報告されています(−2.66点 vs −4.63点、95% CI 0.44–3.50、P = .01)。
神経の修復・維持に役立つ可能性があり、安全性も高く評価されています。
なぜ注目される?
ビタミンB₁₂は神経の維持・修復に欠かせない栄養素です。通常のサプリメントや食品とは比べものにならない高用量でALS進行を抑制できることが証明されました。
・トフェルセン(クアルソディ髄注):遺伝子治療の夜明け
SOD1遺伝子変異を持つALSに対し、「VALOR試験」という臨床試験で評価され、進行の指標であるニューロフィラメントを最大60%低下させる効果が確認され、米国(2023年)、欧州(2024年)、日本(2024年12月)でも承認されました。
ただし、ALSFRS-Rスコアの差は統計学的には有意ではなく、今後の確認試験が注目されています。
特徴
・SOD1遺伝子変異型ALSに特化:「遺伝子変異に基づく個別化医療」が現実化
・アンチセンス核酸医薬で、異常タンパク生成をブロック

日常でできる「筋肉・神経ケア」5つの習慣
筋肉や神経は、一度失うと回復に時間がかかります。でも、毎日の食事・運動・休養で、弱りかけた糸をそっと編み直すことができます。今日のあなたの一歩が、明日のしなやかさを守ります。
1.たんぱく質とビタミンB₁₂をしっかり
魚、肉、卵、乳製品、海藻などをバランスよく。ビタミンB₁₂は神経の健康に欠かせない栄養素です。
※ベジタリアンや高齢者は不足しやすいので要注意。
2.軽い筋トレとストレッチ
朝の5分だけでもOK。つま先立ち、ゆっくりスクワット、肩回しなど、日常に組み込みましょう。
3.“ながら”バランス運動
歯磨き中やキッチンで、片足立ちや膝上げ。神経と筋肉を一緒に刺激します。
4.睡眠と休養の質を高める
夜更かしを避け、スマホは寝る30分前にオフ。神経の修復は睡眠中に進みます。
5.早めの受診と検査
筋力低下、しびれ、つまずきやすさを感じたら、放置せず医療機関へ。早期対応は未来の筋力貯金になります。
入手可能な健康サポート商品
・神経ケアサプリ(ビタミンB群、イチョウ葉エキス、αリポ酸)
・筋肉サポート(ホエイ・大豆プロテイン、HMBサプリ)
・おうち運動グッズ(ゴムバンド、バランスボール、ステッパー)
ご自身の「興味」と「すぐに始められる工夫」をつなげることで、筋肉・神経ケアの後押しになります。
FAQ:よくある質問
| Q | A |
|---|---|
| Q. サプリメントでALSは予防できますか? | → 予防はできません。 |
| Q. メコバラミンと市販品のメチルコバラミンサプリメントは同じですか? | → 成分名は同じですが、成分規格(純度など)は異なっていると思われます。また、ALS治療に使う量は市販品の数百倍です。一般のサプリメントでは代用できません。 |
| Q. トフェルセンは誰でも使える薬ですか? | → 適応はSOD1遺伝子変異を持つALS患者さんに限られます。 |
まとめ
ALS治療は「リルゾール+エダラボン」から、高用量メコバラミン承認、トフェルセン登場へと進化を遂げています。同時に、私たちにできる「未病ケア」も大切です。ドラッグストアやネット通販等で入手できる栄養サポートや運動グッズを取り入れながら、筋肉と神経を守る日常を積み重ねましょう。未来の健康は、今日の小さな一歩から始まります。
【参考資料】
1. Oki R, et al. Efficacy and Safety of Ultrahigh-Dose Methylcobalamin in Early-Stage Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Randomized Clinical Trial.JAMA Neurol. (2022).79(6):575-583.
2. Poinsatte K. Rozebalamin approved for ALS in Japan with 43% slower functional decline. ALS Newstoday. (2024) October 18.
3. Izumi Y. et al. 高用量メコバラミンの筋萎縮性側索硬化症に対する薬理学的作用と臨床成績. 新薬と臨床 (2024) 73:1323-1336.
4. Miller TM, et al. Trial of Antisense Oligonucleotide Tofersen for SOD1 ALS. NEJM. (2022).387:1099-1110.
5. Biogen. Qalsody FDA approves treatment of amyotrophic lateral sclerosis associated with a mutation in the SOD1 gene. FDA Press Release (2023).
6. 医薬品インタビューフォーム(リルテック錠50、ラジカット注30mg、ロゼバラミン筋注用25mg、クアルソディ髄注100mg)
7. ALS治療薬の種類一覧と最新承認薬の効果と副作用
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