くすりを知るシリーズ⑥
薬剤師 NK
ドライアイと歯周病の関連性について知っていますか?
年齢を重ねるにつれて、体のあちこちに様々な不調を感じることが多くなります。その中でも、「目が乾く」「歯茎が腫れる」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。 今回は、目の乾燥によるドライアイと、口腔内の炎症である歯周病について、さらにこれらがどのように関連しているのかをお話しします。
ドライアイとは?
ドライアイは、涙が不足したり、涙が蒸発しやすくなったりすることで、目が乾いてしまう病気です。この病気が進行すると、目の表面が傷つきやすくなり、視界がぼやけたり、視力が低下したり、目が疲れやすくなったりします。ドライアイの原因はさまざまですが、特にスマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスを長時間使うことや、エアコンの効いた部屋で過ごすことが影響しています。これに加え、年齢とともに涙の分泌量が減少することも原因の一つです。
歯周病とは?
歯周病は、歯と歯茎の間に溜まったプラーク(歯垢)や細菌が原因で、歯茎が炎症を起こす病気です。炎症が進行すると、歯を支える骨が溶けてしまい、最終的には歯が抜け落ちることもあります。歯周病は日本でも非常に多くの人がかかっており、成人の約8割が歯周病を経験していると言われています。歯周病は痛みが少ないため、自覚しづらい病気ですが、放置しておくと取り返しのつかない状態になることが多いので、早めのケアが大切です。
ドライアイと歯周病の関係は?
意外に思われるかもしれませんが、ドライアイと歯周病には関連性があることが最近の研究で明らかになっています。新潟大学の研究によると、ドライアイを持っている人は、歯周病のリスクが高いことが分かりました。特に男性にその傾向が強く見られ、ドライアイによる全身の炎症が歯周病を引き起こす可能性が指摘されています。
このような相互関係は、体の各部位が互いに影響し合っていることを示しています。目や口といった一見関係のない部分も、実は全身の健康と深く関わっているのです。
マスクの影響にも注意
最近、マスクを着用する生活が続いていますが、このマスクの使用もドライアイと歯周病に影響を与えることがあります。マスクをしていると、息が目に当たって涙が蒸発しやすくなり、ドライアイを悪化させることがあります。また、マスクをしていると口呼吸が増えるため、口の中が乾燥しやすくなり、これが歯周病のリスクを高める要因となります。マスク生活が必要な場面も多いですが、適度なケアを怠らないことが大切です。
ドライアイと歯周病の治療法と薬
では、ドライアイや歯周病を予防・治療する方法を見ていきましょう。
✔ドライアイの治療法と薬
●点眼薬:ヒアルロン酸を含む目薬や、涙の分泌を促す薬が一般的です。これにより、目の乾燥を軽減し、目の表面を保護します。また、涙に含まれるムチンの分泌を増やし保湿作用を持つ薬もあります。
ヒアルロン酸ナトリウム:保水作用と角膜の修復作用があります。
ジクアホソルナトリウム:ムチン分泌を促し、角膜の障害を改善します。
レバミピド:ムチン産生を促進し、角結膜上皮の障害を改善します。
●外科的療法: 涙点プラグ挿入術により涙の排出口となる目頭部分の涙点という場所を、小さなシリコン製やコラーゲン製の栓でふさぐことで涙を貯めることができます。
✔歯周病の治療法と薬
●抗菌療法:抗生物質や抗菌性の洗口液で口腔内の細菌を減らします。
ミノサイクリン塩酸塩軟膏:歯石や歯垢を取り除いた後に使用し、歯周病の治療を補助します。
アジスロマイシン水和物:歯周病菌を殺菌する抗生物質で、バイオフィルムを破壊し歯周病菌に作用します。
アムホテリシンB:カンジダ菌の胞子を取り除き、歯周病を改善します。
●局所薬物送達療法(LLDS):歯周ポケットに薬剤を直接注入することにより、歯周病の原因となる菌を殺菌する方法で、飲み薬などよりも直接作用し高い効果が見込めます。
●プロフェッショナルクリーニング:歯科医院で定期的に歯石を除去し、口内を清潔に保つことが大切です。
予防のためにできること
ドライアイ予防には、デジタルデバイスの使用時間を制限し、1時間に一度は休憩を取って目をリラックスさせましょう。目薬で適度に目を潤すことも効果的です。
歯周病予防には、毎日の歯磨きとフロスを使ったセルフケアが基本です。定期的に歯科医院で検診を受け、専門的なクリーニングを行うことも重要です。
おわりに
ドライアイと歯周病は、一見無関係のように思えますが、実は全身の健康に関係しています。これらの病気は年齢とともにリスクが高まるため、早めのケアが重要です。適切な予防と治療で健康な生活を送りましょう。
今回ご紹介したドライアイと歯周病についての情報が、皆様の健康維持にお役立ていただければ幸いです。
【参考資料】
●地域在住の日本人成人におけるドライアイと歯周病との関連性:魚沼コホート研究のデータ:Kaung Myat Thwin and Hiroshi Ogawa et al, BMC oral health. 2024 ;24(1);47.
●歯周疾患の有病状況 e-ヘルスネット(厚生労働省)
●ドライアイの治療方法 - ドライアイ研究会
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