インフルエンザ対策について
薬剤師 なお
12月も半ばを過ぎ、なにかと慌ただしくなってまいりましたが、お健やかにお過ごしでしょうか。今回は例年12月~3月にかけて流行する「インフルエンザ」についてお話します。
1 インフルエンザとは
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することにより起こる病気です。38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠等の症状が特徴で、一般的な風邪と同じように、のどの痛み、鼻汁、咳等の症状もみられます。お子様ではまれに急性脳症を発症したり、高齢者や免疫力の低下している方では、二次的に肺炎などを起こし、重症になることがあります。
季節性インフルエンザは、例年12月~3月にかけて流行します。インフルエンザウイルスは大きく分けるとA型、B型、C型、D型の4つに分類されますが、大きな流行の原因となるのはA型とB型です。季節性インフルエンザのウイルスはA型の二つの亜型と2つの系統のB型の4つの種類があります。
A香港型ウイルスやAソ連型ウイルスという言葉を聞かれたことがある方がいらっしゃるかと思います。A香港型ウイルスはこの4つの種類のうちの一つですが、Aソ連型ウイルスは2009年以降検出されていません。A型インフルエンザは、小さく変化しながら毎年世界で流行しています。これが季節性インフルエンザです。
一方、新型インフルエンザのように大きく変化してしまうと、急速に蔓延し、人々の生命や健康、医療体制、生活や経済全体に大きな影響を与えかねません。鳥インフルエンザもヒトへの感染は外国でごくまれにありますが、持続的なヒトからヒトへの感染は確認されていません。ヒトに感染した場合には、重篤な症状となることが多いため、早急な対策が必要となります。
2 インフルエンザを予防する
インフルエンザを予防するには、次のことが有効と言われています。
(1) ワクチン接種
ワクチンは、昨年までは、わが国では注射剤のみが流通していましたが、今年からは、経鼻ワクチン(鼻腔に噴霧)が加わりました。注射剤は不活化ワクチン(毒性をなくしたウイルス)ですが、経鼻ワクチンは弱毒生ワクチン(毒性の弱いウイルス)です。ただし、経鼻ワクチンは、2歳以上19歳未満の方にしか使えず、大人にはこれまでどおり、注射剤のみ使用できます。(注射剤は生後6ヵ月以上の方が対象です。)
注射剤は、今シーズン流行することが予測されるA型株2種類、B型株2種類の計4種類のウイルスを用いて製造されています。ワクチンの接種は流行期を考えると12月中旬までに受けることが望ましいと考えられます。
(2) 外出後の手洗い
外出後は、流水・石鹼で手洗いをすることが、手指などについたインフルエンザウイルスを物理的に除去するための有効な方法です。手洗いは、インフルエンザに限らず接触や飛沫感染などを感染経路とする感染症の対策の基本です。新型コロナウイルス感染症対策にも有効です。指先、指の間、親指、手首は特に注意して洗いましょう。(3) 適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。乾燥しやすい室内などでは、加湿器などを用い、湿度を50~60%に保つことも効果的です。(4) 十分な休養とバランスの取れた栄養摂取
体の抵抗力を高めるために、十分な休養とバランスの取れた栄養摂取を日頃から心がけましょう。(5) 人込みや繁華街への外出を控える
インフルエンザが流行してきたら、特に、高齢者の方や基礎疾患のある方、妊婦、体調の悪い方、睡眠不足の方などは人込みや繁華街への外出を控えましょう。やむを得ず人込みに入る可能性がある場合には、マスクを着用することが一つの防御策になります。医療機関を受診する時や高齢者施設を訪問する時などもマスクの着用を推奨します。(6) 室内ではこまめに換気する
季節を問わず、十分な換気が重要です。台所や洗面所などの換気扇などは室温を大きく変化させることなく換気を行うことができます。窓開けによる換気は、対角線上にあるドアや窓を2カ所開放すると効果的な換気ができます。冬場に窓開けを行うと一時的に室温が低くなってしまいますが、暖房器具を使用しながら換気を行ってください。暖房器具の近くの窓を開けると、入ってくる冷気が温められるので室温の低下を防ぐことができます。また、短時間に窓を全開にするよりは、一方向の窓を少しだけ開けて常時換気する方が、室温変化を抑えることができます。
3 インフルエンザにかかったかもしれない
インフルエンザにかかったかもしれないときは次のように対処しましょう。
[1] 人込みや繁華街への外出を控え、無理をして職場等へは行かないようにしましょう。
[2] 咳やくしゃみがある場合には、家族や周りの方にうつさないよう、マスクをして咳エチケットを心がけましょう。咳エチケットは、周囲にウイルスをまき散らさない効果があるだけでなく、周りの人を不快にさせないためのマナーにもなります。 マスクがない場合はティッシュや腕の内側などで口と鼻を覆い、顔を他の人に向けないようにしましょう。また、鼻水・たんなどを含んだティッシュはすぐにごみ箱に捨て、手のひらで咳やくしゃみを受け止めたときはすぐ手を洗いましょう。
[3] 安静にして休養を取りましょう。特に睡眠を十分とることが大切です。
[4] 水分を十分に取りましょう。お茶でもスープでも飲みたいものを飲みましょう。
[5] 高熱が続く、呼吸が苦しい、意識がおかしいなど具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう。
4 おわりに
国では、全国約5000か所の医療機関から毎週報告されるインフルエンザの発生状況を把握し、集められた情報を分析し提供・公開しています。また、全国の保育所、幼稚園、小学校、中学校、高等学校等においてインフルエンザ様疾患で学級・学年・学校閉鎖が実施された場合に、その情報を、提供・公開しています。 それらにより、私たちが今住んでいるところでのインフルエンザの流行状況等を知ることができます。 それらの情報を参考にしながら、インフルエンザ対策をしっかりとり、インフルエンザにかからない健康な生活を送られることを願っています。