富山県のさかな「ブリ」の栄養

ブリは富山県を代表する魚であることをご存じでしょうか?

富山湾は良質なブリを漁獲できる条件がそろっており、ここで水揚げされるブリは全国的に高い評価を得ています。また、私たちの健康を支える栄養成分を豊富に含む点でも、ブリは注目したい食材です。

今回は、富山県の恵みを象徴する「ブリ」の魅力と、その栄養成分についてご紹介します。  

目次

「富山湾の王者」ブリの魅力

富山湾で水揚げされるブリは、おいしいことで全国的に知られています。産卵期を迎えたブリは、東シナ海を目指して北海道付近から南下してきます。富山湾はブリの南下コース上に位置し、天然の生簀(いけす)のような地形が自然とブリを誘い込むため、良質なブリを大量に漁獲できるのです。

冬のブリは「寒ブリ」と呼ばれ、産卵を控えて脂肪を蓄えていることから脂乗りがよく、とても人気です。なかでも、氷見漁港で水揚げされた良質なブリは「ひみ寒ブリ」というブランドで流通し、その品質は広く認められています。

ブリは平成8年に「富山県のさかな」に選定され、漁業組合などにより「富山湾の王者」として商標登録されています。ブリが富山県を代表する魚として、地元の人々に大切にされていることが伝わってきますね。

ちなみに、ブリは成長とともに名前が変わる出世魚でもあります。その名前は地域によって変わりますが、富山では「ツバイソ」→「コズクラ」→「フクラギ」→「ガンド」→「ブリ」と呼ばれることが一般的です。

 

ブリに含まれる栄養成分

ブリはおいしいだけでなく、健康維持に役立つ栄養成分も豊富に含んでいます。ここでは、ブリに多く含まれる栄養成分について解説します。

DHA・EPA|中性脂肪の減少に役立つ
DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は脂肪酸の一種であり、体内で合成されず、食事から摂る必要がある必須脂肪酸に分類されます。DHAとEPAには、共通して血中の中性脂肪を低下させる作用があると考えられています。

DHAとEPAはサバやイワシなどの青魚に多く含まれる成分であり、ブリにも豊富です。同じ必須脂肪酸に分類され、主に植物油に含まれるα-リノレン酸から体内で作られることもあります。しかしその量はわずかなので、DHAとEPAは青魚を食べて取り入れるのがおすすめです。

ビタミンB群|エネルギー代謝をサポートする
ビタミンB群の中でもブリに多く含まれるのは、ビタミンB₁とビタミンB₂です。どちらも栄養素をエネルギーに変えるはたらきに関わっていますが、とくにビタミンB₁は糖質、ビタミンB₂は脂質の代謝に欠かせない存在とされています。

さらに、ビタミンB₂は細胞の再生を助ける役割もあります。皮膚や髪などを健やかに保つためにも、しっかり摂取しておきたい栄養素です。

ビタミンD|カルシウムの吸収を助ける
ブリに多く含まれるビタミンDには、カルシウムの吸収を促したり、カルシウムが骨に定着するのを助けたりするはたらきがあります。 カルシウムは骨の材料となるミネラルです。加齢とともに骨は弱くなり、骨折しやすくなるため、カルシウムを十分に摂って丈夫な骨を維持する必要があります。

しかし、カルシウムの吸収率はあまり高くありません。カルシウムの力を最大限に活かせるよう、ビタミンDも積極的に摂取することが大切です。

鉄|貧血を防ぐ
貧血といえば若い人に多いイメージがあるかもしれませんが、歳を重ねても鉄の不足による貧血が起こることがあります。とくに高齢になると体を動かす機会が減り、動悸や息切れ、疲労感などの貧血の症状に気づきにくくなるため、注意が必要です。

鉄は赤血球の成分であるヘモグロビンに含まれ、体中に酸素を運ぶ役割を担っています。ブリでは身の白い部分よりも、色が濃い「血合い」に鉄が多く含まれています。また、ブリに含まれる鉄は吸収率が比較的高い「ヘム鉄」であることも特徴です。

 

ブリの栄養成分を活かす食べ方

ブリの栄養成分を無駄なく摂取するなら、刺身や寿司といった「生で食べる」方法がおすすめです。

ブリを煮たり焼いたりすると、脂に含まれるDHAやEPA、水に溶けやすいビタミンB群が失われてしまう可能性があります。栄養成分の損失を防ぐなら、生で食べるのが効率的です。

また、味噌汁やスープのように汁ごと食べる方法もあります。ぶり大根などの煮込み料理や煮付けにする場合は、栄養成分が溶け出た煮汁も食べられるよう、薄めの味付けにするとよいでしょう。
 

ブリの栄養をおいしく取り入れて健やかな体をつくろう

富山湾の恵みであるブリは、おいしさだけでなく、栄養成分にも注目したい食材です。歳を重ねるととくに気になる中性脂肪や骨の健康に対して、ブリに含まれるDHAやEPA、ビタミンDがはたらきかけます。また、エネルギー代謝を助けるビタミンB群や貧血を防ぐ鉄など、毎日を活き活きと過ごすために欠かせない栄養成分もブリには含まれています。

冬はブリが一層おいしくなる季節です。食卓にブリを取り入れて、旬の味わいを楽しみながら、元気あふれる毎日を送れる体をつくりましょう。

 

参照元
●富山漁連「ブリ(富山湾の王者)」
●富山県観光公式サイト とやま観光ナビ「冬は富山へグルメ旅、天然ぶりの美味しさに魅了される」
●厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「脂質異常症」
●食品でひく 機能性成分の事典、中村宜督、女子栄養大学出版部、2022年