実は栄養の宝庫!
きのこの魅力を再発見
        秋はきのこがおいしい季節。炒め物や汁物、煮物など幅広い料理で活躍するうえ、うまみたっぷりの味わいが魅力の食材です。一方で、「きのこは栄養価が低い」と思っている方も多いでしょう。実は、きのこには健康維持に役立つさまざまな成分が含まれています。今回は、きのこの知られざる栄養成分を紹介します。

きのこに含まれる注目の栄養成分
きのこといえば、カロリーが低く栄養価もあまり高くないイメージがあるかもしれません。たしかに、きのこは100gあたり20〜30kcal程度とカロリーは控えめです。しかし、実は毎日の元気を支える栄養成分をしっかり含んでいます。
β-グルカン|免疫機能を高める
きのこに含まれるβ-グルカンは、食物繊維の一種です。 免疫機能を高める作用があると考えられており、感染症に負けない体づくりのサポートが期待できます。
きのこのなかでも、マイタケやシイタケにはβ-グルカンが豊富に含まれています。β-グルカンはきのこの細胞壁に存在するため、よく噛んで食べることが効率よく摂取するコツといえるでしょう。
ビタミンB群|エネルギー代謝に関わる
きのこにはビタミンB群が多く含まれています。とくに多いのが、ビタミンB1とビタミンB2です。
ビタミンB1は、体内で糖質がエネルギーに変わるのを助ける働きをしています。ビタミンB2は、主に脂質をエネルギーに変える働きをサポートしています。どちらも、私たちが食事から摂った栄養をエネルギーとして活かすために欠かせないビタミンです。
ビタミンD|カルシウムの吸収を助ける
きのこに多く含まれるビタミンDは、骨や歯のもとになるカルシウムと深く関わる栄養素です。小腸でカルシウムの吸収を助けたり、血液中のカルシウム濃度を一定に保ったりする役割を担っています。カルシウムは不足しやすい栄養素の一つです。効率よく体に取り入れるために、ビタミンDと一緒に摂取することを意識してみましょう。
また、シイタケには紫外線が当たることでビタミンDに変化する「エルゴステロール」という成分が含まれています。そのため、生のシイタケよりも天日に干したシイタケの方が、含まれるビタミンDの量が多くなります。
GABA|リラックスに役立つ
GABA(ギャバ)は神経の興奮を抑える作用があり、心を落ち着かせてリラックスをもたらすことで注目されている成分です。さらに心の安定だけでなく、高めの血圧を下げる作用も期待されています。GABAを含む食品には発芽玄米やトマトがありますが、きのこではとくにエノキタケに多く含まれています。
エリタデニン|血中コレステロール値や血圧を改善する
エリタデニンはシイタケに多く含まれる成分で、血中コレステロール値や血圧を改善する作用があると考えられています。
きのこに豊富な成分の一つである食物繊維には、コレステロールの排出を促す作用があります。そのためシイタケを食べると、血中コレステロール値に対するエリタデニンと食物繊維の相乗効果が期待できるでしょう。
きのこの栄養成分を無駄なく食べる方法
きのこの栄養成分をできるだけ逃さず摂るためには、次の点を意識してみましょう。
●汁ごと食べられる料理にする
●油と一緒に食べる
●冷凍保存する
きのこに含まれるビタミンB群は、水に溶けやすい性質があります。そのため、きのこを煮物などに加えると、煮汁に栄養素が溶け出てしまいます。
ビタミンB群を逃さず摂取するなら、味噌汁やスープなど、汁ごと食べられる料理に加えましょう。また、ビタミンDは油と一緒に摂ると吸収率が高まるため、きのこを油で炒めるのもおすすめです。
きのこを保存する際は、冷凍してみましょう。きのこの水分が氷の結晶となり細胞を傷つけることで、解凍時に細胞内の成分が外に出やすくなり、栄養を効率よく摂取できるようになります。
きのこの栄養を味方につけて、健やかな体をつくろう
きのこは決して栄養価が低い食べ物ではありません。免疫機能を支えるβ-グルカン、エネルギー代謝を助けるビタミンB群、骨の健康を守るビタミンDなど、体の働きを支えるさまざまな栄養成分を含んでいます。
秋はきのこが旬を迎える季節です。きのこは価格が比較的安定しており、家計にやさしい食材でもあります。シイタケやシメジ、マイタケなど種類が豊富で、さまざまな味や香りを楽しめるのも魅力です。毎日の食卓にきのこを上手に取り入れて、健康づくりに役立てましょう。 
【参照元】
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
木方正.キノコが身体によいわけ. 薬学図書館. 2002. 47(1), p.48-51
佐々木泰弘, 河野元信.ギャバ(GABA)の効能と有効摂取量に関する文献的考察. 美味技術研究会誌. 2010. No.15, p.32-37
栄養素の通になる 第5版、上西一弘、女子栄養大学出版
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