知られざるナスの栄養とは
ナスは、昔から食卓で親しまれてきた身近な野菜です。果肉がみずみずしいため、栄養が少ないと思われがちですが、実は健やかな体づくりに役立つ成分がしっかり含まれています。今回は、ナスに含まれる栄養成分と、その栄養を無駄なく摂る食べ方について紹介します。
多彩な品種が魅力の野菜「ナス」
ナスは、6月頃から旬を迎える夏野菜の一つです。ナスの魅力は美しい色やくせのない味、加熱した際のとろけるような食感のほか、品種の多さにもあります。
スーパーマーケットなどでよく見かける、やや細長い卵形のナスは「千両2号」と呼ばれるものです。紫紺色が鮮やかでアクが少なく、どのような料理にも使いやすいことから、全国各地で栽培されています。
「小ナス」は名前のとおり小ぶりなナスで、皮がやわらかいため、漬物によく使われます。京都の上賀茂地区で伝統的に栽培されている「賀茂ナス」は、きれいな球形をしていることが特徴です。果肉がしっかりしており、田楽や揚げ物に向いています。
ほかにも、皮が真っ白な「白ナス」や、紫色と白色の縞模様が美しい「ゼブラナス」といった個性的な品種もあります。
ここで紹介した品種は、ほんの一部にすぎません。もし変わったナスを見かけたら、ぜひ料理に使ってみてください。
ナスの栄養成分
「ナスにはあまり栄養がない」と思っている人も多いかもしれません。実際、ナスの90%以上は水分で構成されていますが、健康を支える栄養成分も含まれています。ここでは、とくに注目したいナスの栄養成分について解説します。
ナスニン|生活習慣病を予防する
ナスの鮮やかな色のもとになっているのが、ナスニンという成分です。これは、ブルーベリーなどに含まれる色素成分「アントシアニン」の一種であり、視力をサポートしたり、眼の疲れを和らげたりする作用が期待されています。
また、ナスニンは抗酸化作用をもつポリフェノールの一種でもあります。抗酸化作用とは、活性酸素の発生を抑えたり、除去したりするはたらきのことです。
呼吸によって体に取り込まれた酸素の一部は、活性酸素に変化します。活性酸素は免疫機能に必要とされる物質です。しかし、増えすぎると健康な細胞を傷つけてしまい、体の老化や生活習慣病の原因になることがあります。
元気で若々しい体を維持するために、ナスニンなどの抗酸化作用をもつ成分を取り入れましょう。
カリウム|塩分バランスを整えて血圧を安定させる
ミネラルの一種であるカリウムは、体内でナトリウムとバランスをとりながら、細胞の働きを助けています。カリウムには、余分なナトリウム(塩分)の排出を促す作用もあり、塩分の取りすぎが原因となる高血圧の予防や改善に役立つことが期待できます。
厚生労働省が定める食塩の1日あたりの摂取目標量は、成人男性が7.5g未満、成人女性が6.5g未満です。また、高血圧の方は6g未満に抑えることが推奨されています。しかし、実際の20歳以上の平均摂取量は、男性で10.7g、女性で9.1gと、食塩を摂りすぎているのが現状です。 血圧を安定させるには、食塩の摂取量を抑えるとともに、カリウムを十分に摂取して余分なナトリウムを排出することが大切です。
コリンエステル|自律神経を整えて血圧をサポートする
近年、ナスに含まれる成分「コリンエステル」に注目が集まっています。コリンエステルは自律神経のはたらきを調整し、血圧を抑える作用があることがわかってきました。
ナスに含まれるコリンエステルの量は、ほかの野菜の約3,000倍にも及びます。なかには、この成分により「高めの血圧を改善する効果」が認められ、機能性表示がされているナスもあります。血圧が気になる方は、ナスを日々の食事へ積極的に取り入れてみるとよいかもしれません。
ナスの栄養成分を活かす食べ方
ナスはアクを抜いたり、変色を防止したりするために水にさらすことがあります。ナスニンやカリウム、コリンエステルは水に溶けやすい成分なので、水にさらす時間は短めにしましょう。切ってすぐに加熱調理する場合は、水にさらさなくてもかまいません。
ナスの栄養成分は煮汁にも溶け出ることから、汁ごと食べられる味噌汁やカレーなどの料理に使うのもおすすめです。また、ナスニンは皮に含まれる色素成分であるため、できる限り皮をむかずに調理することもポイントです。
ナスの栄養を味方につけて年齢に負けない体づくりを
ナスには、ナスニンやコリンエステルなど、健康を支える栄養成分が含まれています。旬を迎えたナスは一層おいしく、栄養も充実するでしょう。
ユニークな品種を試したり、さまざまな料理に取り入れたりして、夏のナスを楽しんでください。
参照元
●厚生労働省「『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書」
●厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」
●文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
●独立行政法人 農畜産業振興機構「なすの食品機能と機能性表示食品」
●もっとからだにおいしい野菜の便利帳、白鳥早奈英、板木利隆、高橋書店
●栄養素の通になる 第5版、上西一弘、女子栄養大学出版
次の記事へ