お雑煮の栄養

お正月に欠かせない料理であるお雑煮は、さまざまな食材を煮合わせた「煮雑ぜ(にまぜ)」が由来とされています。
その名のとおり、お雑煮は野菜や魚介類など多様な食材が使われるため、見た目も華やかで新年の食卓を彩るのにぴったりの一品です。

今回は、そのお雑煮の栄養について解説します。  

お雑煮の主役!餅の栄養価

お雑煮の具材には地域ごとの特色がありますが、全国で共通しているのは「餅が入っていること」です。
餅はもち米から作られているため、体を動かすエネルギー源となる糖質を豊富に含んでいます。

餅の糖質は、グルコース(ブドウ糖)が何個もつながったでんぷんの形で存在しています。
餅に含まれるでんぷんはアミロペクチンと呼ばれ、消化吸収が早いことが特徴です。
そのため、普段の食事で食べるご飯よりも血糖値が上がりやすいことに注意しましょう。

また、餅を食べるとエネルギーの摂りすぎで太ることが心配な方がいるかもしれません。
餅のエネルギーは、切り餅2個(100g)で約220kcalであり、丸餅の場合も3個でほぼ同じ程度です。
これはご飯1膳分ほどのエネルギーであるため、餅は食べすぎなければ決して太る食べ物ではありません。


お雑煮の栄養価を高めるおすすめの具材


お雑煮は、全国各地でさまざまな具材を加えて楽しまれています。
そこで、栄養の観点からおすすめの具材を紹介します。


《たんぱく質:鶏肉、海老、鯛》

たんぱく質は、健やかな肌や髪、筋力の維持に欠かせない栄養素です。
病原菌やウイルスから体を守る免疫細胞もたんぱく質で構成されているため、感染症が気になる季節は十分に摂取したい栄養素でもあります。

さらに、たんぱく質を摂取すると分泌されるホルモン「インクレチン」には、胃の運動を抑える作用があります。
胃から腸への食べ物の移動が遅くなるため、血糖値の上昇が緩やかになるでしょう。

インクレチンには、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を促す作用もあります。
そのため、たんぱく質の摂取は血糖値のコントロールにも役立つと考えられます。
お雑煮に加えるなら、脂質が少ない鶏肉や海老がおすすめです。
お正月は少し贅沢に、鯛を加えるのもよいでしょう。

 

《脂質:ブリ、鮭》

脂質の摂りすぎは肥満につながりますが、脂質の一種である不飽和脂肪酸は健康効果が注目されている成分です。

不飽和脂肪酸のなかでも、魚に豊富なDHAやEPAには、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減らす効果が期待できます。
さらに、DHAは記憶力や判断力などの脳機能を高め、EPAは血液が固まるのを抑えて血栓症を予防すると考えられています。

お雑煮に加えるなら、ブリや鮭がおすすめです。
特に、ブリは別鍋でゆでて火を通してから器に盛り付けると、臭みが抑えられておいしく仕上がります。

 

《ビタミン、食物繊維:にんじん、ほうれん草、三つ葉》

ビタミンは、エネルギーの代謝を助けたり、肌や粘膜、骨の健康を維持したりと、体の調子を整えるために欠かせない栄養素です。
ビタミンを摂るなら、お雑煮に野菜をたっぷり加えるのがおすすめです。

寒い季節に乾燥肌が気になるときは、肌の潤いを保つβ-カロテンが豊富なにんじん、ほうれん草、三つ葉をお雑煮に加えましょう。
β-カロテン自体はビタミンではありませんが、体内でビタミンAに変わり、健やかな肌づくりに使われます。

さらに、野菜に含まれる食物繊維には、餅を食べたあとの血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。
血糖値が急激に上がると血糖コントロールが乱れるだけでなく、余分な糖質が脂肪として体に蓄えられて太りやすくなるでしょう。
お雑煮は野菜をたくさん取り入れて、血糖値の急上昇を防ぐことが大切です。

 

《ミネラル:ハマグリ、牡蠣》

ミネラルは体の構成成分になるとともに、体の働きを助ける栄養素でもあります。
骨や歯に含まれるカルシウムやリンは、体を構成するミネラルの代表です。
そのほか、赤血球の成分として全身に酸素を届ける鉄、筋肉の収縮や神経伝達に関わるマグネシウムなど、さまざまなミネラルが体内で重要な役割を果たしています。

マグネシウムやカルシウム、鉄などのミネラルを摂るなら、お雑煮にはハマグリなどの貝類を加えてみましょう。
とくに、牡蠣には亜鉛が豊富に含まれています。
亜鉛はDNAや細胞の生成に関わるミネラルであり、肌の代謝や味覚、免疫機能など、体のさまざまなはたらきを支えます。健康な体を保つために、牡蠣を使ったお雑煮も試してみてください。

 

栄養満点なお雑煮で健康な1年にしよう

お雑煮はお正月の定番料理ですが、栄養豊富な食材を加えることで健康をサポートする一品になります。
新年のはじまりに栄養満点なお雑煮を食べて、1年の健康を願ってはいかがでしょうか?