くすりを知るシリーズ⑨

薬剤師 NK

自律神経を整えて、
めまいや眠れない夜を解消しよう!

「最近、めまいがする…」「眠れない日が続いている…」 そんなお悩みはありませんか?
これらの症状は、自律神経の乱れが原因かもしれません。自律神経は、私たちの体の“オン・オフスイッチ”のような存在で、心身の健康を支えています。これが乱れると、体の調子が崩れてしまうことも。今回は、自律神経を整えるための生活習慣や薬の活用法について、わかりやすくお伝えします!





 

自律神経とは?

 

自律神経は、意思とは無関係に心拍数や血圧、呼吸、消化、体温調節などを24時間体制でコントロールする神経系です。この神経は主に「交感神経」と「副交感神経」の2つで構成されており、それぞれがバランスよく働くことで体の安定(ホメオスタシス)が保たれます。

●交感神経:活動時やストレスを感じた時に優位になり、心拍数の増加や血圧の上昇など、体を「戦闘モード」にします。
●副交感神経:休息時やリラックスしているときに優位となり、消化活動を促進し、体を「休息モード」に導きます。


このバランスが崩れると、以下のような症状が現れることがあります。
•めまい:ふらつきや回転感を感じる
•不眠:布団に入ってもなかなか眠れない
•疲労感:十分寝ても疲れが取れない
•動悸:急に心臓がドキドキする
•胃腸の不調:腹部の不快感や消化不良





 

自律神経を整える生活習慣

 

1.規則正しい睡眠習慣
毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を正常に保てます。朝起きたらすぐに日光を浴びることで、夜の睡眠の質が向上します。

2.適度な運動
ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、血流を促進し、ストレスを軽減します。日常的に続けることで効果的です。

3.リラクゼーション
ぬるめのお風呂でのんびりする、アロマやハーブを活用する、深呼吸するなどリラックスできる時間を意識的に取り入れましょう。

4.バランスの良い食事
ビタミンB群やマグネシウムを含む食品を積極的に摂ることで、神経の働きをサポートできます。







 

自律神経の乱れを改善する薬

 

生活習慣を見直しても改善しない場合は、医師や薬剤師に相談して、以下の薬を検討できます。

• 自律神経調整薬(例:トフィソパム)
ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類されますが、自律神経を制御している脳の部位である視床下部に作用し自律神経系のバランスや興奮を調整することで、不安などを軽減し、自律神経失調症の頭痛、めまい、不安、意欲低下などの症状を改善する薬です。日中の活動を妨げることなく、不安やストレスを和らげるのに適しています。

• 抗不安薬(例:ジアゼパム)
抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用をバランスよく有する薬として広く使用されるベンゾジアゼピン系の代表的な薬です。中枢神経系のGABA-A受容体を活性化し、神経の興奮を抑制することで、不安や緊張を和らげます。作用時間が長く、急性症状の緩和に適していますが、鎮静作用や眠気が強いことがあります。

• 睡眠導入薬(例:ゾルピデム)
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類され、脳内のGABA-A受容体のサブタイプに選択的に作用し、神経活動を抑制することで、短時間で睡眠を誘導します。依存性が低く、翌朝への影響も少ないため、不眠症の治療で広く使用されています。飲んだ後すぐにベッドに入ることが大事です。服用後に起きたままだと転倒のリスクが高まります。

• 漢方薬
抑肝散よくかんさん:脳の神経細胞の興奮を抑える作用などがあり、イライラや不安を和らげる効果があります。
加味逍遙散かみしょうようさん:脳の神経細胞の興奮を抑える作用などがあり、イライラや不安を和らげる効果があります。
半夏厚朴湯はんげこうぼくとう:不安障害による喉の違和感や呼吸困難感を和らげる効果があります。神経性胃炎、神経性の食道狭窄、不眠症などの自律神経の症状に使われることもあります。

これらの薬剤は、症状や個人の体質に応じて選択されます。使用する際は、必ず医師や薬剤師に相談し、適切な指導のもとで服用してください。



 

ビタミン剤で自律神経をサポート

 

神経の機能を正常に保つためには、特定のビタミンの摂取が重要です。以下に、神経調節に関与する主なビタミンについてお話しします。

1.ビタミンB群
◆ビタミンB₁(チアミン):脳の神経細胞の興奮を抑える作用などがあり、イライラや不安を和らげる効果があります。
◆ビタミンB₆(ピリドキシン):神経機能の維持や調節に重要な役割を果たしています。特に、神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの合成に関与し、脳内の情報伝達を円滑にする働きがあります。
◆ビタミンB₁₂(コバラミン):造血作用があり、末梢神経を構成する核酸やリン脂質を増加させ、神経を修復する作用があります。

2.ビタミンC
脳内ホルモンを調整し、自律神経を安定させる作用があります。 ストレス軽減にも効果が期待できます。

3.ビタミンD
神経伝達物質の調整や脳の健康維持に関与しています。特に冬季には日照時間の減少によりビタミンDの生成が低下するため、サプリメントでの補充が推奨されることがあります。ただし、過剰摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な摂取量を守ることが重要です。





 

まとめ

 

自律神経の乱れは、生活習慣の見直しや適切な薬剤の使用で改善が期待できます。無理せず、自分に合った方法で心身のバランスを整えていきましょう。お困りのことがあれば、ぜひ薬剤師や医師に気軽に相談してください。毎日のちょっとした工夫が、心身の健康を大きく支えてくれるはずです!





 

【参考資料】
1) 自律神経失調症 ~今話題の健康ワード!~ │ 生活習慣病を予防する(特定非営利活動法人 日本成人病予防協会)
2) わかりやすい病気のはなしシリーズ19 自律神経失調症(一般社団法人日本臨床内科医会)
3)Szabadi E. "Selective anxiolytic action of tofisopam: A unique benzodiazepine derivative." CNS & Neurological Disorders - Drug Targets. 2011, 10(2), 135–144.
4)Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 13th Edition. Chapter 18: Drug Therapy of Depression and Anxiety Disorders
5)Holbrook AM, et al. "Meta-analysis of benzodiazepine use in the treatment of insomnia." CMAJ. 2000, 162(2), 225–233.
6)自律神経失調症への効果が期待できる漢方薬:不眠、ホルモンバランスの乱れ、不安、めまいなど MEDLEY(メドレー)
7)からだの疲れとビタミン-意外と知らない疲れの話|頑張るあなたに、キューピーコーワ|興和株式会社
8)Toriumi K. et al. Vitamin B6 deficiency hyperactivates the noradrenergic system, leading to social deficits and cognitive impairment. Translational Psychiatry. 2021, 11(1), 262-272.
9) Fiona E. Harrison et al. Vitamin C function in the brain: vital role of the ascorbate transporter SVCT2. Free Radical Biology and Medicine. 2009, 46(6), 719-730.
10) 中川 公恵. 脳におけるビタミンD の役割. ビタミン. 2007, 81(11), 565-568.