ジェネリック医薬品について
薬剤師 なお
1 医薬品の種類
医薬品は、一般用医薬品と医療用医薬品の二つに分けることができます。
一般用医薬品は、薬局、ドラッグストア、通信販売等で販売されている医薬品や配置薬があり、私たち自身が選択して購入できる医薬品です。富山常備薬がお客様にお届けしている「くすり」も一般用医薬品に該当します。
一方、医療用医薬品は、医師の処方や指示のもとで用いられる医薬品です。医療用医薬品には、新しく開発・販売された新薬(先発医薬品)(以下、「新薬」という。)とジェネリック医薬品があります。
ジェネリック医薬品は、新薬の特許が切れた後に製造・販売される医薬品で、新薬と同じ有効成分を同じ分量含んでおり、新薬と同等の効き目、安全性があると認められた医薬品です。
図表:新薬の特許有効期間とジェネリック医薬品

出典:政府広報オンライン
新薬は開発を始めて発売できるまでに、約9~16年もの長い時間と数百億円以上の費用が掛かるといわれており、それだけ費やしても、化合物が新薬として世に出る成功確率は、約31,000分の1と非常に低いとされています。
一方、ジェネリック医薬品は、化合物としての有効性や安全性は新薬で確認されていることから、約3~4年の期間、数億円の費用で開発が可能です。開発費が少なくて済む分、ジェネリック医薬品の価格は、新薬と比べて5割程度かそれよりも安い価格となって流通します。
2 ジェネリック医薬品と新薬
ジェネリック医薬品は、新薬と同じ有効成分を同じ分量含み、新薬と同等の効き目、安全性があると認められた医薬品です。では、どうやってそれは確認されるのでしょうか?
ジェネリック医薬品は、認可を受ける際に、新薬と効き目や安全性が同等であるということを示す試験成績を添付して申請する必要があります。具体的には、新薬と同じように体の中で有効成分が溶け出してくるかを確認する「溶出試験」、新薬と同じ速さで同じ量の有効成分がヒトの体内に吸収され、消失していくかを確認する「生物学的同等性試験」を行い、これらの試験結果が新薬と同等であると認められなければ認可されません。また、有効成分の純度を確認する試験や、過酷な条件下や長期保存しても安定で余分な不純物が生成しないことを確認する試験も実施されています。
それでは、新薬とジェネリック医薬品の違いは何なのでしょうか?
主な違いは、有効成分以外の添加剤です。そのため、形状や大きさ、色、味に違いが出ることもあります。また、新薬が発売された後に進歩した製造技術を取り入れたり、飲みやすさを考えた製剤開発をすることにより、患者さんにとって使いやすいジェネリック医薬品が誕生することもあります。例えば、錠剤の大きさを小さくして飲み込みやすくしたり、水なしで飲める錠剤にしたり、苦い味や嫌なにおいをマスクしたりと、新薬より飲みやすくなるよう工夫が加えられることがあります。

3 国が進めるジェネリック医薬品の使用促進策
では、なぜ国はジェネリック医薬品の使用を促進しようとするのでしょう?
我が国では、医療費は、私たちが窓口で支払う自己負担分のほか、保険料や税金で賄われています。令和3年度の国民医療費は45.0兆円、令和4年度は3.7%増の46.7兆円と、医療費が増大し、我が国の保健医療財政は年々厳しさを増してきています。そのうち薬剤費は、令和3年度においては、9.8兆円と全体の21.8%を占めています。
ジェネリック医薬品は、新薬と同等の効き目、安全性があると認められた医薬品でありながら、その価格は新薬と比べてかなり安価であることから、普及させることで医療の質を保ちつつ、薬剤費を削減し医療費を抑制することで患者負担を軽減するとともに、医療保険財政の健全化を図ろうとするものです。
国では、2007年からジェネリック医薬品の使用促進策を進め、その結果、ジェネリック医薬品のある医薬品の使用数量シェアを約8割にすることができました。さらに平成6年には、ジェネリック医薬品の安定供給を基本に、2029年度末までにジェネリック医薬品の金額シェアを65%以上にし、また、すべての都道府県でジェネリック医薬品の数量シェアを80%以上にする等との目標を定め、さらにその使用促進を図ろうとしています。
2024年10月以降、医療機関を受診されましたか?
2024年10月から、制度が変わり、ジェネリック医薬品がある医薬品で新薬を希望した場合には、特別の料金を支払わなければならなくなりました。そうすることによって、新薬より安価なジェネリック医薬品を使用してもらおうとする目的の制度改正です。
例えば、私のかかりつけ医は以前は新薬しか処方しなかったのですが、先日受診した際に、私は新薬を希望しなかったため、4つの処方薬のうち3つがジェネリック医薬品に変わりました。また、カプセル剤だったものが錠剤になったものもありました。このように目に見える形でジェネリック医薬品の使用促進策を体験することができました。ちょっとしたことですが、我が国の素晴らしい国民皆保険制度を持続可能にしていくためには必要な取り組みなのだろうなと思いました。
4 おわりに
さて、富山常備薬の本社がある富山県内には100を超える医薬品製造所がありますが、ジェネリック医薬品を製造しているメーカーも数多く存在しています。これらのメーカーでは、300年以上の歴史のある「くすりの富山」で培われた製剤技術を活かし、何とか工夫して患者さんが使いやすい便利な医薬品を製造しようと日々研鑽を重ねていると聞いております。
そんな富山発の医薬品が、国民の皆さんの健康増進と保健衛生の向上に貢献してくれることを願ってやみません。
(参考)
●政府広報オンライン「安心してください ジェネリック医薬品」
●製薬協ガイド2025
●日本ジェネリック製薬協会ホームページ
●中央社会保険医療協議会薬価専門部会(第226回)資料
●厚生労働省ホームページ(健康・医療)