くすりを知るシリーズ①

薬剤師 NK

「治療薬」と「痛み止め」と
「ビタミン剤」という3タイプの薬

 

日本で使える薬の数は、医師の診察のもとで出される「処方薬」(医療用医薬品)と
薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者に相談して選ぶ「市販薬」
(要指導・一般用医薬品)を合わせると、約2万4000品目に及びます
(処方薬は約1万3000品目、市販薬は約1万1000品目※)。

 

薬の数や種類は多岐にわたりますが、ここでは薬の働きや性質を知る観点から
「治療薬」、「痛み止め」、「ビタミン剤」の三つに大別してみます。

それぞれの区分には独自の役割と特性があり、医療現場で重要な役割を果たしています。
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。





治療薬:病気の原因にアプローチする


治療薬は、病気の症状の根本的な原因を取り除くために使用されます。
治療薬には抗菌薬、抗ウイルス薬、抗がん剤などが含まれます。
これらの薬は、病原体の増殖を抑えたり、病変に直接作用することで
患者の健康を回復させる目的があります。


抗菌薬は病原体を直接破壊するので細菌感染症の治療に使用され、
ペニシリンやセファロスポリンなどが代表的です。
抗ウイルス薬は細胞内でのウイルスの増殖や放出を抑え、
インフルエンザ、ヘルペスやHIVなどのウイルス感染に対して用いられます。
抗がん剤はがん細胞の増殖を阻害したり、体内の免疫機能を
強化したりするために使われ、化学療法の一環として重要な役割を果たしています。

 


治療薬の使用においては、適切な診断と投与が不可欠です。
誤った使用は、耐性菌の発生や副作用のリスクを高める可能性があるため、
医師や薬剤師の指導の下で慎重に使用しましょう。



 

痛み止め:症状を和らげる、症状が出るのを防ぐ


痛み止めは、痛みを和らげるために使用される薬です。
痛みの原因を直接治療するわけではなく、症状の軽減を目的としています。
代表的な鎮痛剤には、アセトアミノフェン、
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、オピオイドなどがあります。


アセトアミノフェンという薬は比較的安全で副作用が少ないため、
軽度から中程度の痛みに対して広く使用されます。

NSAIDsにはイブプロフェンやジクロフェナクが含まれ、
炎症を抑える効果もあるため関節炎や筋肉痛などに有効です。
オピオイドは強力な鎮痛効果を持ち重度の痛みや手術後の痛みの管理に
使用されますが、依存性のリスクが高いため慎重な使用が求められます。


痛み止めの選択は、痛みの原因や程度、患者の体質や既往歴に応じて行われます。
自己判断での使用は避け専門家のアドバイスを受けることが重要です。



 

ビタミン剤:足りないものを補う


ビタミン剤は、体内で生成できない、あるいは不足しがちなビタミンを
補給するために使用されます。
ビタミンは、体の代謝や成長、免疫機能の維持に欠かせない栄養素です。


ビタミンDは骨の健康を保つために必要であり、日光を浴びることにより
体内で生成されますが、日照不足や食事からの摂取が不十分な場合、
サプリメントとして補給されます。

ビタミンCは抗酸化作用があり、免疫機能の強化に寄与します。
ビタミンB群はエネルギー代謝や神経系の健康維持に重要です。


ビタミン剤の使用は栄養不足を補うための有効な手段ですが、
過剰摂取には注意が必要です。
ビタミンの過剰摂取は、時に健康被害を引き起こすことがあります。
特に脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)は体内に蓄積しやすいため、
適切な摂取量を守ることが重要です。

 


まとめ


薬の役割と特性を理解するため、薬を「治療薬」、「痛み止め」、
「ビタミン剤」の三つに大別してみました。

治療薬は病気の原因を直接攻撃し、痛み止めは痛みを和らげ、
ビタミン剤は栄養を補給することで、総合的に人々の健康を支えています。
これらの薬は専門家の指導の下で適正に使用することで、効果を発揮し、
皆さんの健康改善に寄与することでしょう。


実際の医療現場ではより詳細な知識と細かい分類が必要ですが、
今回の大別法は、薬の基本的な理解や一般的なコミュニケーションに有用
と考えられます。

皆さんご自身が使用される薬がどれに分類されるかその目的を理解した上で、
適正に使用していきましょう。




(※:一般財団法人日本医薬情報センター医薬品情報データベース、令和6年5月より)