たくさん薬を飲んでいるとき、副作用はどう見分ける?
~くすりを知るシリーズ㉙~
薬剤師 NK
はじめに
「最近、なんとなく調子が悪い。でも、どの薬のせいなのかはよくわからない。」
薬局・薬店では、そんな相談を受けることがあります。薬が多くなるほど、体調の変化と薬の関係は見えにくくなります。だからこそ、薬剤師は説明書を何冊も開く前に、まず症状が出た時期と、その前後に何が変わったかを丁寧にたどっていきます。
副作用を考えるときの手がかりは、だいたい4つあります。1つめは「いつからか」。飲み始めてすぐなのか、しばらくしてからなのかで、疑う薬は変わります。2つめは「何か変わったか」。新しい薬が増えた、量が変わった、市販薬やサプリメント、漢方薬を始めた。こうした小さな変化が、意外と大きなヒントになります。3つめは「その薬らしい症状か」。薬には、それぞれ起こりやすい副作用があります。そして最後は「薬以外に理由がないか」。睡眠不足、脱水、感染症、体力低下、病気そのものの悪化なども見逃せません。
目次
1.副作用は一つではない
副作用という言葉はよく使われますが、その内容はさまざまです。薬が効きすぎて起こるものもあれば、アレルギー反応のように比較的早く現れるもの、長期間服用することで肝臓や腎臓、血液に影響が出るものもあります。
たとえば眠気やふらつきは、薬を始めた直後に目立つことがあります。一方で、血液検査の異常や、じわじわ続くだるさは、何週間あるいは何ヵ月も経ってから見つかることがあります。また、人によって薬の効き方や副作用の現れ方は異なるため、「以前は大丈夫だったから今回も大丈夫」とは言い切れません。
高齢になると、副作用は典型的な症状ではなく、「何となく元気がない」「食欲が落ちた」「転びやすくなった」「物忘れが増えた」といった変化として現れることもあります。年齢のせいと思っていた症状が、実は薬の影響だったということも少なくありません。
2.実際の相談でよくあること
たとえば、血圧の薬、痛み止め、睡眠薬を飲んでいる方が、「朝のふらつきが強い」と相談に来られたとします。よく話を伺うと、数日前から市販のかぜ薬も飲み始めていたということがあります。このような場合は、一つの薬だけを見るのではなく、薬同士の組み合わせや、その日の体調、水分不足なども含めて考えます。
また、胃腸薬を飲んでいる方が「食欲が落ちた」と話されることもあります。しかし実際には、感染症やストレス、寝不足、暑さによる脱水などが背景にあることも少なくありません。副作用かどうかを判断するときは、薬だけではなく、その人の生活全体を見ることが大切です。
複数の薬を服用している場合は、一つひとつの薬では問題がなくても、組み合わせによって眠気やふらつきが強くなることがあります。特に高齢者では、転倒や骨折につながることもあるため、薬の飲み合わせや体調の変化にも注意が必要です。
3.伝え方で、見え方が変わる
薬剤師が助かるのは、症状だけではなく、その前後の流れがわかることです。
「いつ飲み始めたか」「余っていた薬を再開したのか」「飲み忘れたあとにまとめて飲んだのか」「市販薬やサプリメントを追加したのか」。
こうした情報がそろうと、原因の見当がつきやすくなります。
お薬手帳は、こうした情報を整理する大切な道具です。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用し、本人の同意のもとで薬剤情報を共有することで、重複した処方や飲み合わせの確認にも役立ちます。
4.早めに気づくための工夫
副作用を早く見つけるために、特別な知識は必要ありません。むしろ大切なのは、日々の小さな記録です。
症状が出た日、薬を変えた日、体調を崩したきっかけを書き留めておくだけでも、後から振り返る大きな助けになります。
「ちょっと変だな」と思ったら、一人で我慢せず相談することも大切です。
一方で、「副作用かもしれない」と感じても、自己判断で薬を中止することは避けましょう。血圧の薬や心臓の薬などは、急に中止することで病気が悪化する場合があります。気になる症状があるときは、まず薬剤師や医師に相談し、安全な対応を一緒に考えることが大切です。
発疹が広がる、息苦しさがある、強いだるさが続く、食事や水分が十分にとれないなどの症状では、早めの受診が必要になることもあります。
5.薬剤師が見ているのは、薬だけではない
薬剤師の仕事は、薬の説明をすることだけではありません。
年齢、体重、腎臓や肝臓の働き、食事量、水分摂取、生活リズム、転倒歴など、さまざまな情報を合わせて、副作用の可能性を考えています。
実際、患者さんが何気なく話した「最近あまり眠れていない」「仕事が変わって生活が乱れた」「食事を簡単に済ませることが増えた」という一言が、原因を見つける大きな手がかりになることは珍しくありません。
6.患者さんにできること
副作用を早く見つけてもらうために、次の3つを意識しておくと役立ちます。
・いつから飲み始めたかを、できるだけ正確に伝える。
・市販薬、サプリメント、漢方薬も含めて伝える。
・生活の変化を隠さず話す。
「余っていた薬を飲んだ」「最近忙しくて眠れていない」。こうした話は言いにくいものですが、原因を見つけるためにはとても大切な情報です。
7.小さな声かけが、信頼につながる
仕事に悩む薬剤師に向けて、「毎日同じように見える業務にも意味がある」という視点は、とても大切です。
派手な成果がなくても、患者さんへひと言声をかける、少し雑談をする、体調の変化に気づく。そうした積み重ねが、相談しやすさにつながります。薬の安全を支えるのは、特別な一場面だけではありません。日々の何気ない会話の中に、多くのヒントがあります。
薬は、正しく使えば病気の治療や健康維持を支える心強い存在です。しかし、どのような薬にも副作用が起こる可能性はあります。だからこそ必要なのは、過度に心配することではなく、小さな変化を見逃さず、早めに相談することです。
薬剤師は薬をお渡しするだけではなく、その後も安心して薬を使い続けられるよう支える身近な専門家です。困ったことや気になることがあれば、一人で悩まず、どうぞ気軽に相談してください。

※写真はすべてイメージ
【参考文献】
1. PMDA「患者の皆様からの医薬品副作用報告」
2. PMDA「患者副作用報告の取組の概要」
3. PMDA「重篤副作用疾患別対応マニュアル」
4. 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用のメリット」
5. 厚生労働省「マイナンバーカードで受診し、情報提供に同意すると」
6. 日本老年医学会『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』
7. 日本病院薬剤師会「プレアボイド報告」
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