しびれ、こわばりの原因って何?
― 受診の目安と最新の治療・お薬事情 ―

~くすりを知るシリーズ㉓~
薬剤師 NK

 

はじめに

「朝起きた時に指先が動かしにくい」「正座もしていないのに足がジンジンする」……。 こうした「しびれ」や「こわばり」は、単なる疲れと片付けられがちですが、実は体からの重要なサインです。最近では、ウイルス感染の後遺症や脳の認知機能との関わりなど、新しい知見も次々と明らかになっています。今回は、その原因と最新の治療、受診の目安について詳しく解説します。



目次

1. 「しびれ・こわばり」の正体:3つの基本原因

原因は多岐にわたりますが、医学的には大きく以下の3つに分類されます。 ●物理的な圧迫(神経・血管):
頚椎症や腰椎椎間板ヘルニア、手根管症候群など、骨や筋肉が物理的に神経を圧迫して起こります。
●代謝・内科的要因:
糖尿病性末梢神経障害が代表的です。高血糖により神経細胞がダメージを受けたり、微小な血管が詰まることでしびれが生じます。また、神経修復に不可欠なビタミンB₁₂の不足も大きな要因です。
●免疫・炎症の異常:
「朝のこわばり」が特徴的な関節リウマチなど、免疫システムが自分の関節を攻撃することで炎症が起こり、動きにくさが生じます。

2. 【最新トピックス】
注目される新しい原因と概念

近年、これまでの検査では「異常なし」とされてきたしびれに対し、新しい考え方が普及しています。
小線維神経障害(SFN):
従来の神経伝導速度検査(太い神経の検査)では見つからない、温度や痛みを感じる「細い神経」のダメージです。最近では、Long COVID(新型コロナ後遺症)に伴う長引くしびれの原因の一つとしても注目されています。
痛覚変調性疼痛(Nociplastic Pain):
組織の損傷や神経の圧迫がないにもかかわらず、脳や脊髄の「痛み・しびれの処理システム」が過敏になり、症状を感じ続けてしまう状態です。心理的ストレスや生活習慣の乱れが、症状を増幅させることが分かってきました。
インフラメイジング(炎症+老化):
加齢に伴う慢性的な微弱炎症が、関節のこわばりや神経の過敏性を引き起こすという概念です。

3. 受診の目安:見逃してはいけないサイン

以下の症状がある場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診しましょう。

 
緊急度 症状の目安 推奨される受診先
【至急】 突然の強いしびれ、力が入らない、ろれつが回らない、顔のゆがみ 脳神経外科(救急車検討)
【早めに】 片側の手足だけがしびれる、感覚が鈍い、歩行時にふらつく 整形外科・脳神経内科
【要相談】 朝のこわばりが15分以上続く、関節の腫れ、微熱がある 整形外科・リウマチ科
 

4. 薬剤師が教える「治療薬」の役割

治療は原因に合わせて行われますが、最近では「痛みやしびれを脳に伝えない」戦略が進化しています。
・神経修復・保護:
メコバラミン(ビタミンB₁₂)などが中心です。神経のシート(髄鞘)を修復します。
・神経の過剰興奮を抑える:
プレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)は、神経からの過剰な「しびれ信号」をブロックします。
・血流改善:
プロスタグランジン製剤などを用い、神経に十分な酸素と栄養を届けます。
・最新の免疫調整:
関節リウマチ等によるこわばりには、JAK阻害薬などの分子標的薬が登場し、劇的に改善する例が増えています。

 

💊お薬の副作用チェック

・コレステロールを下げる「スタチン系薬剤」などで稀に筋肉のこわばりが出ることがあります。新しい薬を始めてから違和感が出た際は、必ず薬剤師へ教えてください。

5. 生活の中でできるセルフケア

・温熱療法: 神経や筋肉の血流を促すため、入浴やサポーターでの保温が推奨されます(※炎症で熱を持っている場合を除く)。
・適切な運動: 同じ姿勢の継続は神経を圧迫します。1時間に一度は肩や手足を回すストレッチを取り入れましょう。
・神経に優しい栄養: ビタミンB₁, B₆, B₁₂を含む食事(豚肉、レバー、ナッツ類など)を意識しましょう。

最後に

しびれやこわばりは、改善までに時間がかかることも多い症状です。しかし、適切な治療とケアで「気にならないレベル」まで和らげることが可能です。「この薬、いつまで飲むの?」「市販のビタミン剤とどう違うの?」といった疑問があれば、いつでもお薬手帳を持ってご相談ください。


 

【参考文献】
1.日本神経学会, 監修. 末梢神経障害診療ガイドライン 2024. 東京: 南江堂; 2024.
2.日本リウマチ学会, 編集. 関節リウマチ診療ガイドライン 2020. 東京: 診断と治療社; 2020.
3.日本糖尿病学会, 編. 糖尿病診療ガイドライン 2024. 東京: 南江堂; 2024.
4.Kishi T, et al. Small fiber neuropathy: A common but overlooked cause of pain and numbness. J Clin Neurol. 2025;21(1):45-58.
5.Oaklander AL, et al. Peripheral Neuropathy Evaluations of Patients With Prolonged Long COVID. Neurology. 2022;98(18):e1898-e1909.
6.日本ペインクリニック学会, 編. 慢性疼痛診療ガイドライン 2021. 東京: 真興交易(株)医書出版部; 2021.
7.浦部晶夫, 島田和幸, 川合眞一, 編集. 今日の治療薬2025: 解説と便覧. 東京: 南江堂; 2025.