日本で起こる奇跡 美しい紅葉を楽しもう
「こうよう」と「もみじ」
その違いとは?
気温の冷え込みとともにスタートした紅葉シーズン。一般的な見ごろは9~11月とされていますが、今年は不安定な天候の影響で12月中旬まで楽しめる地域もあるようです。
そもそも紅葉とは、主に落葉広葉樹に見られるもので、落葉する前に葉の色が変わる現象を指します。
厳密には変わる色によって赤色は紅葉、黄色は黄葉(おうよう)、褐色を褐葉(かつよう)と呼びますが、それらを区別することは難しいため総称として「紅葉」とされています。
では、「もみじ」との違いは何でしょうか。
紅葉を楽しむことを「紅葉(もみじ)狩り」といいますが、「モミジ」は植物学上には存在せず、鮮やかに色づく数種のカエデを指します。
一方で、「もみじ」という言葉は植物が色づくことを指す「もみづ」が変化したといわれており、カエデと紅葉という二つの意味を持ちあわせています。
古の人々も楽しんだ
秋の風物詩
源氏物語に描かれるなど、平安時代の貴族たちの間ではすでに山野や庭で色づいた葉を見ながら宴会をしたり、和歌を詠んだりする遊びが行われていたようです。
その後、文人墨客の間で四季が移り変わる自然に対して「わび」「さび」が表現されるようになり、文学や絵画、茶道などにも影響を与えました。
このような長い歴史の中から、「紅葉狩り」という海外にはない楽しみが生まれたと考えられます。
紅葉ではなくあえて落葉の時期に訪れ、深紅や黄色の絨毯が敷かれたような風景に身を置くなど、さまざまな楽しみ方があるのも日本ならでは。
これほどまでに日本人が紅葉を愛するのは、風情を楽しむといった文化的背景だけでなく、その特別な美しさにも理由があるようです。
世界一の風景を
今年も、これからも
たくさんある樹木の中でも、紅葉が見られるのは主に落葉広葉樹。
しかし、その落葉広葉樹が生育するのは、日本や中国、韓国などの東アジアとアメリカやヨーロッパの一部だけ。
つまり、紅葉はどこでも見られるものではなく、とても珍しい現象なのです。
さらに驚くのが、他国では赤や黄といった単色の紅葉が多いこと。
赤や黄色、オレンジなどに常緑樹の緑も混ざった色とりどりの紅葉は日本でしか見ることができません。
また、紅葉の代表格カエデは、世界に約150種の仲間があり、そのうちの25~26種が日本に自生しているといわれています。
その多くが日本固有種であり、その種類の豊富さも他国に類をみない艶やかで美しい紅葉の秘密です。
ではなぜ、日本には落葉広葉樹が多いのでしょうか。その答えは、はるか昔、氷河期までさかのぼります。
他の地域では大地を覆った氷河によってほとんどの落葉広葉樹が死滅してしまいました。しかし、日本列島は周辺に黒潮が流れていたおかげで海が残り、あたたかい海岸線を中心に落葉広葉樹が生き延びることができたのです。
毎年、当たり前のように眺めている紅葉。しかしそれは、気象や地形などいくつかの偶然が重なった奇跡なのです。
今や紅葉は、桜に次ぐ日本の魅力として世界中の人々の憧れとなっており、秋を選んではるばる海外から訪れる人も多いといいます。
今年も、日本が誇る世界一美しい紅葉を存分に楽しみ、そして次の世代にも大切に手渡したいものです。